ひと昔の夏休み、当時住んでいた埼玉県から岡山県へ帰省することになった。お金はないが時間はあったので、青春18きっぷを使って鈍行列車で帰ることにした。
普通に太平洋側から帰ると面白くない。なので、途中から北進して日本海側から帰ることにした。そして3日目の夜、本題の事件が起こる。
三日目の夜。日本海側を行き、出雲大社の参拝し、岡山市街を目指していた。
しかし、夜は更け、確か岡山市街まで30分程度手前の駅でその日の終点を迎えた。あと少しだったのにと思いつつ野宿できるところを探していた。そこに、一台のタクシーが静かに止まる。
「どこに行くんなら?」
車の窓を開け、運転手が言った。
数年間、岡山弁を聞いていなかった自分にとって、ぼっけえ、きょうてえ(とても怖い)方言。しかも、巻き舌で。
旅中、いろいろ絡まれそうになったが、慣れ親しんだはずの岡山弁が一番怖かった。。
このタクシーに乗ると、きっとデンゼル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリーが主演していたあの映画のタクシーに乗った人のような末路になるに違いない。。。
彼女はすぐにタクシーが告げたのとはまったく違う地区を走っていることに気付き、慌てて夫を起こした。パニックになった夫婦は客席と運転席の間を仕切る強化ガラス戸を叩き、すぐに車を止めるように要求したが運転手は無言で取り合わず、車を走らせ続けた。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC
「岡山市街です」
と蚊の鳴くような返事をしたと思う。乗れ!とか言われたらどうしよう!お金ないし!
「そうか、近くなら乗せていったのに…」
むしろ残念そうに車を発進して通り過ぎて行った。
ファーストインプレッションが悪く変な想像をしてしまったが、冷静に考えると親切な方だった。
岡山に来て方言に驚く方もいると思ういい人が多いと思う。方言と人柄のギャップ萌えを楽しんでほしいとも思う。
「どこへ行くんなら?」
そうぶつぶつ言いながらこのブログを書いていると、子供が答えた。
「公文!」
「近くだけど車に乗せてあげないよ!」
あのタクシーの方は、やはり優しかったに違いない。